漫画「ウッドストック」を語る
ウッドストックはインディースシーンでのバンド活動を緻密に描いた作品で、浅田有皆によって「月刊コミック@バンチ」で連載されています。ウッドストックと聞いてまず音楽フェスが頭に浮かぶ、ジミヘンの姿が目に浮かぶ、そのような方にこそこの作品は楽しめるようになっています。
作者が本格的な音楽フリークであるため、作中においても頻繁に実際のアーティストや楽器が登場し、ちょくちょく欄外にも解説が入ります。このような緻密な内容がリアルな音楽への描写を生み出しているのです。専門用語などがわからない人はそれを調べていくと勉強になるでしょう。
プロのミュージシャンもコメントを寄せるほどのリアルな作品なのですが、そのようにプロが気に入る要因の中にバンドマンとしては絶対に避けられない人間関係と、そこに対しての葛藤が描かれているからです。人としての成長が描かれています。
インターネット上の架空バンドという設定
主人公がネット配信で架空のバンド活動をしていることも、現代のミュージックライフのスタンスを反映した描写です。実際に動画共有サイトなどではインターネットを介したコラボレーションが数多く行われておりますし、バンドの音源をネット配信することも今となっては全く珍しいことではありません。現代においてバンド活動するためにはインターネットは切り離すことができない存在なのです。
また主人公の成瀬のように宅録ミュージシャンから実際のバンドに昇華するのは大変であるということもリアルに描かれています。ネット配信上の架空のバンドから、実際のバンドに進化するということは、そこに血の通った人間関係が構築されるということです。人と触れ合い、自分以外の誰かとひとつの音楽を奏でることは、それ自体にエネルギーが必要です。
成瀬楽が作中で葛藤することは、実際のバンドマンも通る道です。初めてバンドを組んだ時、自身の理想が100パーセント活かせるわけではないということ、人の音を聴いて自身の音も聴くということなど、これからバンドをはじめる方のバイブルにもなる作品です。
あらすじ
インターネット上で密かに話題となっているバンドCharlie。その実態は不明でありネット配信で音源が公開されているだけであった。新曲が公開されるたびにマニアックなファンはこぞって音源をダウンロードして聞き入って意見を交わしていた。しかしその実態は成瀬楽によって宅録のみで作られた架空のバンドであった…
Charlie
成瀬 楽(なるせ がく)/ GIM(Gt)
Charlieのリーダーでありギターを担当している本作の主人公。音楽を愛してやまない青年でCharlieの全楽曲の作詞・作曲・編曲・演奏・プログラミングをこなし、ギターの腕前も確かなものであるなど才能溢れる人物ではあるが、本人にはあまりその自覚がないようである。引っ込み思案で人付き合いが苦手であり家庭内の事情もあって上京してもバンドを組むことなく、バンドへの思いをCharlieというインターネット上の架空バンドにぶつけていた。使用ギターは「ギブソン・レスポール・ジュニア」
新山 椎奈(にいやま しいな)/ siina(Dr)
Charlieのドラムス。ライブハウス「Boot Boy」の店長であり、気が強くしっかりとした姉御肌の女性である。運送会社に勤務していた楽とは仕事関係でしばしば交流がある程度であったが、あることをきっかけに楽をCharlieのメンバーだと確信するようになる。Charlieが架空バンドではなく実際のバンドとして活動することを後押しした人物であり、自身がドラムスとしてCharileに加入してからは精力的にバンドの切り盛りをしている。
町田 要(まちだ かなめ)/ psy (Ba)
Charlieの金髪頭のベーシスト。なおかつては黒髪であった。元々大手バンドのベーシストであったがある理由に脱退。その後、丸八運送会社に勤務するようになりそこで楽と出会う。クールで人付き合いが悪い性格であるが楽とは気が合い、かけがえのない友人として彼のことを慕っている。また音楽に対しては非常にストイックであり自分の求める音楽をとことん突き詰めている。それゆえにベースのテクニックはずば抜けている。使用ベースはフェンダー・プレシジョンベースのレフティモデル
前田鈴音(まえだ すずね)/ sioux(Vo)
Charlieのボーカル。16歳の女子高生で「スゥ」と呼ばれている。小柄ながら気が強く自分が思ったことをハッキリと口に出す性格である。また空手を習っており、大会で優勝したりごろつきをノックアウトしたりと相当な腕前を誇る。Charlieに加入する以前は、ある理由により音楽からは意図的に遠ざかっていた。しかし河面を揺るがす程の声量を持っており、楽がたまたま彼女が歌っている所を目のあたりにしたところ彼女の歌声に心を動かされ、彼女をCharlieのボーカルとして推薦することとなる。
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